前回の記事ではPCIT(親子相互交流療法)について、それを普段の育児に取り入れるために【特別な時間】をつくることについて紹介しました。
PCITでは、宿題として家での親子遊びの時間をもつことが手続きに含まれています。PCITの中ではこの5分の親子遊びの時間を【特別な時間】と呼んでいます。子どもにとって、親との遊びの時間は楽しく特別なもの。また、親にとっても、少し意識的に次のスキルを用いながら子どもと関わるという点で、特別な時間になると思います。
ブログ管理人は、PCITの公認セラピストという立場ではありませんが、一人の親として書籍「0~3歳の心の育て方」を主に参照しながら自分の子どもと自宅で実践している立場です。そこから得られた気づきも含めて書いていこうと思います。
Don’Tスキル
【特別な時間】の中では、子ども中心で遊ぶことを意識していきます。言い換えると、子ども自身にリードしてもらい遊んでいきます。その時に、子どものリードを妨げてしまうかもしれない態度はしないよう、「Don’Tスキル」として定められています。普段は言いたくなったり、自然に使っていることが多いこれらの言葉も、この5分間は言わないように意識してみます。
命令しない
「〇〇してください」「~しなさい」などの直接的な命令だけでなく、「〇〇してくれる?」「~はできる?」「~しましょう」なども間接的な「命令」と捉えられます。私も子どもによく「~しておいてね」「一緒にしようね」など声をかけていますが、この【特別な時間】の5分間は、子ども自身の選択権や過ごし方を尊重するため敢えて使わないようにします。
質問はしない
PCITの中では、「どうするの?」「これは何?」などの「質問」も、子どもに回答を求めるという点で子ども主導ではないとみなしているようです。そのため、【特別な時間】の間は言わないように意識していきます。
否定的なコメントをしない
「あぁ~残念」「失敗しちゃったね」「また残しちゃったね」…これもついつい言ってしまいますが、子どもが失敗した時にあまり意識せず否定的なコメントを言ってしまうことは多いです。ネガティブなことを言っているなという雰囲気は、小さな子どもにも伝わり、新たな挑戦の意欲をなくしてしまうこともあるかもしれません。そのため意識してネガティブなコメントは避けるようにします。
これらの「~しない」というスキルを忠実に守ろうとすると、「これもダメ」「あれもダメ」…じゃあどういえばいいんだろう…?とうまく子どもに声掛けできなくなる人も多いかもしれません。次に紹介する「PRIDEスキル」を積極的に使ってみよう、という意識をまず持ってみると、構えずに声掛けがしやすいかなと思います。
Doスキル(PRIDEスキル)
P 子どもの行動をほめる(Praise Behavior)
遊びの中で子どもをどんどんほめていきます。私もほめほめ習慣を作った以前の記事で感じましたが、ささいなことでも褒められると子どもは本当にうれしそうです。子どもによっては、「え?そんなことでも褒めるの?」とリアクションするかもしれませんが、褒める時はなるべく具体的に、「こういう理由で、ママはすごいと思っているよ」という思いが伝わるように言葉にしてみるとよいかもしれません。親の側も、褒め慣れていない場合も、言葉にしてみるうちに子どものほめポイントにより気づけるようになっていくと思います。スキンシップなどもあると安心感が増す場合もあるかもしれません。
R 子どもの言ったことを繰り返す(Reflect Speech)
子どもにとっては、親が自分の話を聞いているんだということが伝わる声掛けになります。子どもの話した言葉をそのまま繰り返すことは、「聞いているよ」というサインにもなりますし、否定や評価などが入らないという点でも積極的に使いたい言葉かけになります。(ただし、子どもが言葉の音を間違えていたり、「てにをは」の使い方が違っていたりする場合は、さりげなく正しい日本語に直して繰り返します。
I 子どもの遊びを真似る(Imitare Play)
普段あまりやらないかもしれませんが、【特別の時間】の5分間は親も子どものまねを積極的にしてみます。動きや仕草を真似てみたり、おもちゃを同じ遊び方で真似してみたり。そうすると、普段親目線で子どもと接しているのが、子どもの視点でどんな所に興味を持っているのか、何をしたがっているのかに気づくことがあります。例えば、レールを繋げて電車を走らせる遊びをしていた際、寝ころんで電車を横から見るように子どもが動かしていたら、同じ姿勢に、同じ目線になってみます。「あ、タイヤが回っているのが見える」とか、「電車と同じ高さで迫力があるように感じる」など、やってみて感じたことがあればそれも言葉にしてみましょう。「子どもに学ぶ」姿勢です。
D 子どもの行動を説明する(Describe Behavior)
子どもの遊びを実況中継するよう言葉にしていきます。子どもが実際に行動を起こしていることを具体的に言葉にしていくといいでしょう。例えばブロックでロボットを作ろうとしている(ように見える)場合、「赤いブロックの上に黄色のブロックを重ねました」など見たものを言葉にしていきます。「おぉ~これはロボットでしょうか、おしろでしょうか」と実況中継するのも楽しそうですが、具体的な行動を子どもがする前に先回りになってしまうので、あくまで予測したことは胸の中で留めておきます。
E 子どもとの時間を楽しむ(Enjoy Time Together)
これまで書いてきたように、5分間を親が子ども目線になって楽しむというのも重要なポイントです。親の気持ちが子どもに伝わって、その逆で子どもの気持ちが親に伝わることもあるでしょう。そうした双方向のやり取りの中で、「通じ合った」という感じが親子の絆をより強めていくものと思います。
1日5分の【特別な時間】をやってみて
親子の絆づくりや、子どもの心を育てていく一つの方法、PCITをセルフで行う方法について紹介してきました。
この【特別な時間】をもったことで、私の場合は日ごろ「早くしなさい」「なんで言うことを聞かないの」「何度言えばいいの」など、子どもに対して求めすぎていた自分に気づくことができました。そして、より子ども目線に寄り添った対応を意識するようになったかと思います。常に意識するのは親も疲れてしまいますが、1日5分というのも取り入れやすさがありました。基本は一対一で行うという所で、子どもにとっても特別感があったようでした。
書籍の中では、【特別な時間】で子ども主体の遊びができるようになった後、次にいうことを聞く練習にチャレンジしていく段階もあります。今回紹介した【特別な時間】の段階だけでも気づきを感じられるかもしれませんが、興味がある方はぜひ読み進めていただけるとより理解が深まると思います。
書籍では、アタッチメントのタイプについて、親の養育態度のタイプについて、子どものかんしゃくへの対応など困りごとの具体例についての対応が書いてあります。
私もまた何度も読み返して、子どもと一緒に練習していきたいと思いました。
最後までお読みいただきありがとうございました。